AI / 独自解説
AIで作られた偽の画像・動画をシェアする前に:見分けるより確かめる手順
生成AIの偽画像は、見た目だけでは見分けにくくなっています。発信元・日付・一次情報の確かめ方と、C2PAやSynthID、YouTubeのAIラベルで分かること・分からないことを整理しました。
公開・資料確認: · 制作:TrendScope(AI支援)
公式資料をもとに構成・執筆し、比較表と判断例を加えた解説です。実機測定・試遊結果ではありません。資料に基づく説明には出典を付け、架空の例は本文中に明記しています。
「よく見れば分かる」はもう当てにならない
総務省の令和6年版情報通信白書は、ディープフェイクを「AI技術を用いて合成された音声、画像あるいは動画コンテンツ」と説明し、生成AIで作られた首相の偽動画がSNSで広まった事例を紹介しています。判定する技術と生成する技術が競い合う形で進むため、偽の情報を正確に見分けるのは難しいとも書いています。出典:総務省 令和6年版情報通信白書「偽・誤情報の流通・拡散等の課題及び対策」
指が6本ある、文字が崩れているといった見分け方は、生成AIの性能が上がるにつれて使えなくなっています。当サイトとしては、画像そのものを鑑定するのではなく、「誰が、いつ、どこで出した情報か」を確かめる方向に切り替えることを勧めます。
この記事は公的機関と各社の公式資料をもとにした整理です。検出ツールの精度を当サイトで試したものではありません。
シェアする前に確かめる4つのこと
総務省は、正確かどうか判断できない情報は安易に投稿・拡散しないよう呼びかけ、確かめ方として次の4つを挙げています。出典:総務省「インターネット上に流通する真偽の不確かな情報」
| 確かめること | 画像・動画で具体的にすること(当サイトの例) |
|---|---|
| ほかの情報と比べる | 同じ出来事を報道機関や公的機関が伝えているか検索する |
| 発信元を確かめる | 最初に投稿したアカウントをたどり、普段の投稿内容や運営者を見る |
| いつの情報か確かめる | 画像検索で、同じ画像が以前に別の話題で出回っていないか調べる |
| 一次情報を探す | 「〜によると」とある場合、その元の発表や記事を開く |
4つとも確かめられないときは、シェアしないで待つのがいちばん確実です。本物だった場合でも、数時間待てば報道や公式発表で確かめられることがほとんどです。
災害のときほど、古い映像と偽の救助要請が広がる
能登半島地震では、東日本大震災の津波の映像や、2021年の熱海の土石流の映像を、能登の映像であるかのように結びつけた投稿が多く広まりました(出典)。白書のコラムは、情報通信研究機構(NICT)の分析で、発災後24時間の救助の報告1,091件のうち104件がデマと推定されたことも紹介しています。出典:総務省 令和6年版情報通信白書「災害時における偽・誤情報への対応」
このコラムは、生成AIによって精巧な偽の画像や動画が簡単に作られ、偽・誤情報がさらに増えることへの懸念も示しています。災害のときは「助けになりたい」という気持ちから急いでシェアしがちですが、偽の救助要請が広がると、本当に助けが必要な人への対応が遅れるおそれがあります。被災地の情報は、自治体や気象庁などの公式の発信を先に見ます。
AIの表示や透かしで分かること・分からないこと
AIで作ったことを示す仕組みも広がっていますが、どれも「付いていれば手がかりになる」もので、付いていないことは本物の証明になりません。
| 仕組み | 分かること | 限界 |
|---|---|---|
| C2PA(コンテンツ認証情報) | 作成に使ったツールや編集の経緯。署名後の改変は検出できる | 情報がファイルから切り離されることがある。内容が真実かは示さない |
| SynthID(Google) | Gemini アプリで、Google のAIで作られたか確かめられる | ほかのAIで作られたものは判定できない。加工をくり返すと検出できなくなることがある |
| YouTube の開示ラベル | クリエイターがAIで作った・改変したと申告したリアルな動画 | 申告に頼る部分があり、ラベルがない動画が本物とは限らない |
出典はC2PA FAQ、Gemini アプリ ヘルプ「AI 生成の画像、動画、音声を検証する」、YouTubeヘルプ「生成 AI コンテンツの使用に関する開示」です。YouTube は、実在の人物に実際にはしていない言動をさせる動画や、起きていない出来事をリアルに描いた動画などに開示を求めています。表は各資料をもとに当サイトで作成しました。
架空の例:家族のグループに届いた「決定的瞬間」の写真
次は架空の例です。Eさんの家族のグループトークに、有名人が事故を起こしたように見える写真が「拡散希望」と付けて転送されてきました。
Eさんは写真の細部を見比べる代わりに、名前で最新のニュースを検索しました。報道は見つからず、画像検索をすると、数日前に海外のAI画像の投稿サイトに同じ写真が載っていました。Eさんは「元の投稿がAI画像のサイトだったので、本当の出来事ではないと思う」とだけ返し、転送をやめるよう頼みました。偽物だと断定するより、確かめた手順を短く伝えるほうが、家族にも受け入れてもらいやすくなります。